コロナ禍と「人間関係失調症」
講師
樋口恵子先生(NPO法人 高齢社会をよくする女性の会 理事長)
略歴
1932年 東京生まれ 1956年3月、東京大学文学部美学美術史学科卒業 東京大学新聞研究所本科修了。 その後、時事通信社・学習研究社、 キヤノン株式会社を経て、評論活動に入る 東京家政大学教授(2003.3まで)
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コロナ禍のもと、多くの高齢者、それも何らかの要介護要因を持つ人たちが、長いあいだ家族と面会できなかったり、デイサービスが閉鎖されたり、日ごろの人間関係が中断される経験を余儀なくされた。今回の経験を分析し、後期高齢期の人口が増大する2025年以降の社会で、この年齢層の社会参加、生きがい探求の答えを探す必要があると思う。もちろん年齢と共に多数となる認知症対策は必須の問題だ。 それと同時に、アフター・コロナ社会では2025年以降、75歳以上人口が一時的に増加し、老化によって心身の衰えを持つ人数が急激に増える。日本社会にとって初めての経験である。 心身の衰退を抱えた人々の社会参加、生きがいづくりは、人間関係の保持を柱としながらアフター・コロナの高齢者対策として浮かび上がってくるのではないか。それは、何らかの障がいを持つ人々の社会参加の問題とも通底する。 この9月横浜で開催された「生きがい・助け合いあいサミットin神奈川」の分科会のテーマの一つの「心身機能が低下しても、持てる能力を生かして高齢者が社会参加する方法とは」というタイトルに心ひかれた。これから日本の歴史始まって以来の「心身機能の低下」した高齢者(一応の目安は75歳または80歳以上)が急激に増える。その対策は「適切な介護の提供」だけでよいのだろうか。 今年敬老の日に発表になったように、日本の高齢化率は29.1%で断然世界トップである。とくに団塊世代の後期高齢者が一挙に増大し、より若年の世代を凌ぐ状況となったとき、このテーマが個人的にも社会的にも問い直されると思う。 年をとったら余計なことを考えず、介護を若い世代に任せて、というのも一つの考え方である。しかしこんなことを考えざるを得ないのが人間の老いでもある、と思う。