ご挨拶

日本地域看護学会第28回学術集会 学術集会長
石田 千絵

日本赤十字看護大学地域看護学教授

2025年9月6日(土)・7日(日)、日本地域看護学会第28回学術集会を日本赤十字看護大学広尾キャンパスにて開催いたします。

2025年は、団塊の世代が後期高齢者となる節目の年です。これまで「地域包括ケアシステム」の構築が進められてきましたが、近年はさらに、高齢者に限らず多様な人々が生きがいを持ち、それぞれが人生の主役として暮らせる社会として、世代や制度の垣根を越えて共に生きる「地域共生社会」の実現に向けた取り組みが広がっています。

本学術集会では、この節目の年にふさわしい主題として、
「地域共生社会のこれから ~すべての人がつながりあう社会をつくる~」をテーマに掲げました。

プログラムでは、地域共生社会に関連する講演のほか、多様な人々を主役としたシンポジウムや交流集会を行います。たとえば、子育て世代への支援を掲げる東京都渋谷区の取り組み、農民の生活を守る長野県佐久市の医療・看護職の活動、そして「地域・在宅で暮らすすべての人」をエンパワメントする地域看護の実践など、あらゆる実践から学ぶ機会を設けています。

さらに、オンデマンド教育講演では、難病や障がい(知的・身体・精神)を抱えながら地域で暮らす当事者や家族の想いを通じて、支援する人・される人という枠を超えた新たな視点を得ることができます。今回は3つの常設の部屋を設け、キッチンカーも用意し、五感を通して楽しみながら学べる場を整えましたので、学術的な知見と生活に根ざした実体験により、参加をされる皆様ご自身が地域看護の未来を再考する機会になると思います。

また、公衆衛生の基本である「水」や「トイレ」、さらには「貨幣」にまで議論を広げ、「地域共生社会のこれから」を多角的に考える機会としています。これらを改めて問い直すことは、暮らしの基盤を支える大切さに気づき、地域共生社会を「理念」から「日々の生活」へと落とし込むとともに、「これから」を考えるための大切な視点になると考えています。

本大会が、多くの方々にとって活発な意見交換と情報共有の場となり、「すべての人がつながりあう社会」を共に考える契機となれば幸いです。
多様性のまち・渋谷区の広尾キャンパスで、皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

2025年8月吉日