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【公開市民講演会】

主催:公益社団法人 日本薬剤学会

共催:株式会社 島津製作所

後援:愛知県

    名古屋市

    愛知県薬剤師会

    愛知県病院薬剤師会

日時:2013年5月25日(土) 14時~16時

会場:ウインクあいち(名古屋駅前)

座長:名古屋大学医学部附属病院 教授 山田清文 先生

 

【招待講演】

『セルフメディケーションの将来展望』

  日本一般用医薬品連合会 副会長
  日本OTC医薬品協会 副会長
 

 

【特別講演】

『予測の科学:IT創薬と放射線の健康への影響』

 東京大学アイソトープ総合センター長

 東京大学先端科学技術研究センター教授  児玉 龍彦 先生

 

 

招待講演

  「セルフメディケーションの将来展望」
   日本は国民皆保険制度により、だれでも医療機関での診断・治療を受けることが可能であり、その恩恵により世界トップレベルの長寿社会となった。その一方、国民の高齢化による保険医療費の増加、少子化や経済成長鈍化による医療保険収入の減少、保険財政の赤字の拡大などにより肥大化し、我が国の誇る国民皆保険制度の維持が危ぶまれる事態に直面している。
  2011年の医療費は37兆円を超え、4年連続過去最高を更新する結果となった。さらに今後も毎年1兆円以上の増加が見込まれている。
  このような背景の中、自分自身で健康を管理し、軽い病気やけがの症状緩和や予防のために、OTC医薬品(一般用医薬品) やサプリメント、マスク、サポーターなどを使って手当てすること、いわゆる「セルフメディケーション (Self-medication)」が脚光を浴びるようになった。
  セルフメディケーションは、世界保健機関 (WHO) においても、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」であると定義されており、その役割は一層重要なものになると考える。
  中でもセルフメディケーションの大きな担い手であるOTC医薬品のうち、医療用医薬品として長らく使用され、その有効性及び安全性が確認されたものを薬局・ドラックストアで購入できるようにした、いわゆる「スイッチOTC医薬品」に着目したい。
  既に欧米各国においては、スイッチOTC医薬品の活用によるセルフメディケーションが進み、軽医療分野の医療費抑制に貢献している。我が国においても、医療保険財政が緊迫する中、生活者の皆様に幅広い選択肢を提供できるスイッチOTC医薬品が広がれば、数兆円ともいわれている軽医療分野の医療費の増加抑制に大きく貢献できると考える。
  「メタボリックシンドローム」を始めとした生活習慣病対策も医療費増大の大きな要因である。生活習慣病の患者及びその予備群は8千万人以上といわれており、しかもその半数は何らの医療措置もされていないという現状がある。三大生活習慣病 (高血圧、糖尿病、脂質異常症) の軽症ないし境界領域の患者に係る医療費はおおよそ数千億円といわれているが、さらに増加の一途をたどることが予想される。さらに近年、高齢
化による運動器の障害により要介護になるリスクが高い状態となる「ロコモティブシンドローム (運動器症候群)」もクローズアップされている。これらの対策としてスイッチOTC医薬品などをうまく活用することができれば、医療費の抑制はもちろんのこと、国民の皆様の健康維持にも大きく貢献することが期待できる。
  自分の健康を自分で守り、毎日の生活を健やかに過ごすために欠かせない「セルフメディケーション」、この将来展望について皆様と一緒に考えていきたい。
   

特別講演

  「予測の科学 : IT創薬と放射線の健康への影響」
児玉 龍彦 (東京大学先端科学技術研究センター 教授、東京大学アイソトープ総合センター長)
   21世紀に入り、ヒトゲノムの解読が進み、薬をスーパーコンピューターで設計できる時代がやってきた。
人の体には酵素や受容体というタンパク質があり、薬はそれを標的としている。
 人の体にはたくさんの水分があり、タンパク質は水溶液中で揺らいでいる。そのため予測するのが非常に難しく、従来は化合物ライブラリーという数万から数百万個の化学物質を集めて、その中から標的となるタンパク質に合った薬を選んでいた。
  近年、スーパーコンピューターの速度が速くなり、水溶液中のタンパク質が動いている様子をシミュレーションできるようになってきたため、この技術を用いて薬を設計することが可能になってきた。
  この計算は非常に大きな演算量になるものの、「京」スーパーコンピューターという世界トップレベルの計算機を用いることで、がんの治療薬の設計が可能になってきた。タンパク質の結晶構造を正確に捉えて、薬の設計に必要な情報を的確に得れば、化合物を何百万種類も持たなくても、10種類くらいを合成できれば、良い薬になるか評価できるようになってきている。シミュレーション技術は、薬の設計だけでなく、さまざまな社会の分野で、今までと違ったアプローチを可能にしている。
  同じ事は原発事故後の放射線の影響にも当てはまる。これまでは、何十万人という疫学調査でも、がんに関わるかはわかりにくかった。しかしながら、ゲノム配列全体をみると、例えばチェルノブイリの子供の甲状腺がんでは、染色体の7q11というところが3つに増えていることがわかってきて、診断や治療が変わろうとしてきている。新しい検査機器や放射性物質をのぞく技術もできてきている。がんができてからあわてるよりも予測に基づき、予防する科学が大事になろうとしている。
  系統的に情報を集めて、コンピューターを駆使して、予測する技術が、病気の治療や予防に重要になりつつある。その現状を紹介したい。
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