学術集会長挨拶
第1回日本認知症の人の緩和ケア学会学術集会
学術集会長 小川 朝生
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科 科長
この度、2025年4月20日に、オンラインにて第1回日本認知症の人の緩和ケア学会学術大会を開催する運びとなりました。ご報告とともにご挨拶申し上げます。
日本認知症の人の緩和ケア学会は、5年間にわたる研究会活動を踏まえて、2024年4月に組織されました学術団体です。
社会の高齢化と共に急増する認知症といかに向き合うかは世界的な課題となっています。特に超高齢社会に至ったわが国では、認知症をもつ人が2025年で470万人、2040年には584万人と推測されています。
認知症の人が、その人らしい暮らしを維持できるよう支援するうえで、多くの認知症の人は併存症や身体機能、社会的な課題を併せ持つという点を忘れてはなりません。認知症の人への支援は、認知症の治療と行動・心理症状の治療・ケアに留まらず、身体的な問題への対応や身体・精神心理的苦痛の軽減、社会的な課題への対応を含んだ総合的なアプローチを取る必要があります。また、このアプローチは、自宅や施設、入院など、各々の治療・ケアの場を越えて協働する必要もあります。認知症の人に起こりうる危機的状況を予測し、包括的にあらかじめ対処をすることで当人の負担の軽減を図る緩和ケアのアプローチは、わが国の医療と介護の課題を解決するために欠かせない視点です。緩和ケアアプローチの普及と実装が急がれます。
本学会は、これら認知症の緩和ケアに関する教育と実践を推進することを目指し活動をして参りました。過去5回オンラインで研究会を開催、その都度1000名以上の方に参加いただき、課題を共有しております。本人と家族を含めた包括的なアプローチを、地域と医療機関をまたいで多職種で共有し、世界の潮流となっている認知症の緩和ケアをわが国にも根付かせたいと考えております。
今回の学術大会のテーマは、「いま、どうして認知症の緩和ケアを問うのか」といたしました。認知症の緩和ケアを広く知っていただくとともに、医療と介護、病院と地域、そして当事者と支援者が共有できればとの願いを込めています。
開催形式もオンライン形式を活用する予定です。触れる機会を最大限確保して、認知症診療・ケアに携わる人々の広がり、社会への貢献に努めたいと存じます。
皆様のご参加をお待ち申し上げます。