ご挨拶
第35回日本サイコオンコロジー学会総会
会長 岡島 美朗
自治医科大学附属さいたま医療センター メンタルヘルス科 教授
この度、第35回日本サイコオンコロジー学会総会を2022年10月14日、15日にタワーホール船堀にて開催させていただくこととなりました。
今回のテーマは、「サイコオンコロジーの中核と展開」といたしました。
日本サイコオンコロジー学会も35回の総会を重ね、その間にさまざまな知見を蓄えてまいりました。2007年のがん対策基本法が施行されてからは、様々な施策とともに、がん患者に精神的な問題がありそのケアが重要であることと、基本的な精神症状の診断と治療について、幅広く啓発が行われてきました。では、精神症状への対応のなかで、サイコオンコロジーを特徴づけるものは何なのでしょうか?抑うつ・不安やせん妄は精神科領域で広く診療されていますが、がん患者さんに生じる症状や、その治療において、精神科・心療内科の他の領域からサイコオンコロジーを際立たせるものはあるのでしょうか?また、サイコオンコロジーは客観的な精神症状のコントロールに限られるものではないはずです。精神症状としてはとらえきれない患者のこころの痛みをケアする術は、サイコオンコロジーの中にどのように位置づけられるのでしょうか?このようなサイコオンコロジーの中核がどのようなものであるかを明確にすることは、今後のサイコオンコロジーの発展にとってきわめて重要であると考えます。
他方、近年はサイコオンコロジーの応用編ともいうべき、新たな課題も浮上しています。がん患者のなかでも、AYA世代、発達障害などの精神障害を持った方、認知症の方、就労している方のなど、こころのケアをおこなうために特段の配慮を必要とする集団への関わり方がクローズアップされています。また、従来からサイコオンコロジーと密接なかかわりを持つ緩和ケア、臨床腫瘍学に加え、サイコオンコロジーを基礎づけ、課題の解決に糸口を与える哲学、倫理学などの隣接領域から、サイコオンコロジーのあり方を考えることも重要になりつつあります。こうした動きは、今後のサイコオンコロジーの展開にとって、大きな意義を持つもの思われます。
世界的なCovid-19の流行により、第33回合同大会、第34回総会はウエブ開催となりました。第35回総会が、この間の皆様の営みを振り返りつつ、膝を交えて「サイコオンコロジーの中核と展開」を議論する機会になればと思っております。多くの皆様のご参加をお待ちしております。