会長挨拶

からだの仕組みを知ることによる看護実践-基礎研究と臨床実践の往還-

千葉看護学会第28回学術集会 
会長 田中裕二(令和健康科学大学 看護学部)

 千葉看護学会第28回学術集会を開催させていただくにあたり,ご挨拶を申し上げます。
 千葉看護学会学術集会は例年千葉大学にて開催してきましたが,新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を考慮し,第28回学術集会もライブ配信(同時双方向配信)を2022年9月3日(土),オンデマンド配信を2022年8月27日(土)~ 9月18日(日)に行います。

 メインテーマは,「からだの仕組みを知ることによる看護実践-基礎研究と臨床看護の往還-」です。私は千葉大学看護学部の創生期に生理学などの看護基礎科目を学修し,現在も生理学,特に神経生理学を専門としています。看護の対象である人間の構造と機能について深く探究したいと思い,医学部に異動し,教育や研究に携わってきました。その後,看護師の資格を有し,看護基礎科目を教授できる教員として千葉大学に異動しました。
 教育に関しては,現在,特定行為研修ではフィジカルアセスメント,臨床病態生理学,疾病臨床病態学,臨床薬理学などを学修しますが,生理学などの看護基礎科目がとても重要です。看護の対象者から種々の情報を得るには形態機能学などの知識が必要になります。今後の看護基礎教育では,形態機能学以外の看護基礎科目との水平的統合教育や専門科目との垂直的統合教育によって有機的に統合されたカリキュラムを構築していく必要があります。
 研究に関しては,これまで高次脳機能に関連した前頭連合野および頭頂連合野で,「動機づけ」や「認知地図(cognitive map)」の研究を行ってきました。例えば,認知症患者の徘徊は,この認知地図が障害されたからだと考えられています。また,意識障害者に対して脳低体温療法が施行され,意識レベルが改善する症例が多数報告されています。現在は,意識障害患者の意識レベルを改善するための看護ケアについて神経生理学的な手法を用いて研究を行っています。
 本学術集会では,看護基礎教育における形態機能学の教育内容や脳科学を基盤とした基礎研究と臨床看護との往還について,教育者,研究者,実践者の各視点から考え,今後の看護学の方向性についての示唆を得るために本テーマを設定しました。
 本学術集会の参加者は,健康や生活の課題解決を支援する看護職者,医療・福祉等の専門職者,教育研究者,市民,関係者です。看護学の立場からから新たな価値を生み出し発信することで,人間と地域社会の課題や困難を克服していきたいと思っています。
 皆様におかれましては,本学術集会によって,新たな出会いや連携の機会となれば幸いです。