第62回日本農村医学会学術総会を平成25年11月7日(木)、8日(金)の両日、福島市で開催いたします。伝統ある本学術総会の学会長という大役を賜りまして誠に光栄に存じます。
福島県ではマグニチュード9.0の東北太平洋沖大地震と津波、これに引き続く東京電力福島第一原子力発電所の事故により大きな災禍に見舞われました。大震災から2年が経過した現在も、福島県では未だ15万7千人の人々が避難生活を送り、旧警戒区域内(原発20km圏内)の双葉厚生病院をはじめとする7病院は休止中です。このうち5病院が含まれる双葉郡4町は向後5年間帰還しないことを決め、仮の町構想が進んでおります。また、旧緊急時避難準備区域(20~30km圏内)は解除されて1年半が経過いたしましたが避難住民の帰還は1割に止まり復旧は進んでおりません。福島第一原発事故も完全に収束したとは言えず、病院を含む双葉郡地域コミュニテイーの復興・再生はようやくとば口に立ったに過ぎません。これから復興・再生に向けての遠く困難な道のりが待ち構えております。
今回の大会テーマは「地域コミュニテイーの復興・再生と包括的地域医療」といたしました。もとより農村における地域コミュニテイーの復興・再生と包括的地域医療は日本農村医学会の主要なテーマの一つですが、私ども福島県厚生連は東日本大震災に際して双葉、鹿島厚生病院の全館退避をはじめとする様々な体験をいたしました。そこで、「被災地における」という意味を加えて中心に置き、より広範な意味を持たせてこのテーマとした次第です。東南海地震をはじめとして、全国で大規模災害への備えが検討されているなか、最も大きな複合型大規模災害を経験し、さらに現在も進行中である福島県において東日本大震災からこれまでを総括し、将来に向けた対応を考える機会になればと願っております。
全国農業協同組合中央会の全国大会において将来的な脱原発が活動方針として採択されました。農業にとっては出荷制限や風評被害は致命的な問題です。本学会では全会員が放射線被曝に関する正しい知識を学んでいただきたいと思います。さらに、予想もしなかった病院の全館緊急避難、それに伴う患者さんと医療スタッフへのストレス、長期にわたる避難生活の問題、復興・再生のための人材育成などを取り上げたいと考えております。
実りある学会になりますよう、多数のご参加をお願い申し上げ、ご挨拶といたします。