第17回日本ヘルニア学会学術集会

上級演題

シンポジウム
S-1 「JHSヘルニアガイドラインの可能性と限界」
2015年日本ヘルニア学会から鼠径部ヘルニア診療ガイドラインが出版され、わが国では、これに基づいた鼠径部ヘルニア手術がなされてきた。一方、2018年正式にInternational guidelines for groin hernia managementがHernia 誌上に発表された。これによると、鼠径部切開法ではLichtenstein法が強く推奨されており、わが国で広く行われている腹膜前修復術(mesh-plug法、Bilayer mesh法、Kugel法、Direct Kugel法など)を否定している。しかし、わが国のヘルニア治療の歴史とその結果から見て、その結論が正しいか否か、疑問の声があるのも事実である。果たして、これらの術式は本当に推奨されないのか?また、腹腔鏡手術の推奨されるべき適応はいかなるものか、各施設の現状を報告して頂き、日本はどこに向かうべきかを論じて頂きたい。
S-2 「ヘルニア手術のRegistry & Follow-up」
近年良性疾患であるヘルニア手術において、術後の状態を正確に把握するための症例登録の重要性が叫ばれている。さらに登録するだけでなく、正確なフォローアップをいかにしていくか、またそこからわかってくる事実を検証していく必要がある。このシンポジウムでは、特にフォローアップに重点を置き、各施設でのフォローアップの方法やそこから得られた事実を発表していただき、全国的にヘルニア手術を経時的に観察する機運を高めていただきたい。
なお、本シンポジウムでは、フォローアップ症例の最多施設およびフォローアップ率が最高の施設(100例以上)は自動的にシンポジウムに採用します。また、郵送等で用いる書式の一例を添付するので、自由に活用ください。
注:フォローアップ調査に関しては、各施設の倫理委員会、治験審査委員会などのしかるべき委員会の許可を受けることをお勧めいたします。
S-3 「鼠径部ヘルニア教育から始める外科教育」
鼠径ヘルニア手術は一般外科医教育において重要な術式である。鼠径部切開法によるヘルニア修復術では手術の基本手技を学ぶことができ、また腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術には腹腔鏡下手術のエッセンシャルな要素が凝縮されているからである。本セッションでは各施設における鼠径ヘルニア手術指導の取り組みを発表していただき、さらにどのようにして難易度の高い手術指導へ繋げていけるのかを論じていただきたい。
S-4 「腹壁瘢痕ヘルニアのBest Practice」
腹壁瘢痕ヘルニアの治療には、Prothesis使用の有無、到達法の違い等により様々な術式が存在し、近年新たな術式も開発されてきている。しかし、病態に応じた一定の手術はなく、各施設で様々な工夫がなされているのが現状である。
本セッションでは、各施設の手術適応・術式の選択・手術の工夫・治療成績を発表いただき、現在の腹壁瘢痕ヘルニアに対するBest Practiceを探っていただきたい。
S-5 「安全に施行しうるヘルニア日帰り手術に向けて安全な日帰り手術のための工夫」
本邦において鼠径ヘルニア日帰り手術が本格化し、日本短期滞在外科手術研究会が立ち上がって2019年で15年となる。日帰り手術は患者と外科医のお互いの利益になることは周知されてきたが実際に行うにはいくつかの越えなければならないハードルがあるようにも思われる。できるだけ簡単に、安全に施行できる日帰り手術について各地で行われている実例を報告していただきたい。

ビデオシンポジウム

VS-1 「内視鏡外科認定取得者が教える認定のためのコツ」

日本内視鏡外科学会の技術認定は低侵襲安全な手術手技を身につけていくうえで重要なステップであり、多くの若手外科医が目指す関門である。本セッションでは、技術認定医を取得した外科医がどのような点に気をつけて認定を勝ち得たかを丁寧に説明して頂きたい。また、技術認定の資格取得者を多く輩出している施設の教育方法も紹介して頂きたい。

VS-2 「困難症例に対するヘルニア手術の要点と再発防止の工夫」

困難症例に対して安全で再発のない手術を行うことは、手術機器や技術が進歩した現在も大きな課題である。今回は困難症例として再発ヘルニアとサイズが大きなヘルニアに焦点をあて、どちらか一方を選択して発表いただきたい。困難症例に対して安全で確実な手術を行うための要点を明らかにするとともに、これらに対して自施設で手術を行った後に再発あるいは再々発をきたした症例を提示いただき、レトロスペクティブに再発防止の工夫に関して討議したい。

VS-3 「食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術」

高齢者人口の増加により巨大な食道裂孔ヘルニアを持つ症例が増加しており、食道裂孔ヘルニアに対する外科的治療の機会が増加している。多くの施設で本疾患の外科的治療は腹腔鏡下手術を適応としているが、ヘルニア修復法(メッシュの使用の有無や形状・固定法など)や逆流防止手術としての噴門形成術については、いまだ施設間で格差がある。また、ヘルニアの再発率も高く、その予防策も重要である。今回、本疾患の腹腔鏡下手術のビデオをご提示いただき、各施設での手術方法やその工夫、治療成績(再発率・術後PPI内服の可否など)について幅広く検討したい。

VS-4 「前立腺癌術後に発症した鼠径ヘルニアに対する手術法」

従来から前立腺癌術後に鼠径ヘルニアが高頻度に発症することは知られており、第16回日本ヘルニア学会学術集会でもシンポジウムで討論されている。今回はそれを継承し主に治療法に関しての議論を目的とする。治療法として、果たして腹腔鏡で行うことが可能であり、妥当であるのか?あるいは、前方アプローチによる手術が適しているのか? 前方アプローチの場合、メッシュ使用の有無やメッシュのタイプ、それを使用する際の工夫、対策、注意点など様々な角度から発表していただき最適な治療法を探りだしていただきたい。

VS-5 「いわゆるde novo型鼠経ヘルニアに対する術式の工夫」

JHS分類Ⅰ型ヘルニアのなかには、腹膜鞘状突起に由来しない、いわゆるde novo型ヘルニアが存在する。最近、この概念についての認識も高まり、通常のⅠ型ヘルニアとは異なった手技上のpitfallがあることもわかってきた。本セッションでは、このヘルニアに対する実際の修復術における注意点や工夫などをビデオでご発表いただき、発生学的および解剖学的考察を含めた討論をしていただきたい。前方アプローチから腹腔鏡下修復法まで幅広い術式での応募を期待したい。

パネルディスカッション

PD-1 「LPECの成人への適応」

腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖術(LPEC法)は、いまや小児鼠径ヘルニアに対して標準的な手術として広く行われている。また最近では、20歳代や30歳代のいわゆるAYA世代に対してLPEC法を行う施設も散見されている。しかし、はたして、どこまでLPEC法を成人に対して行っていいのかはいまだ十分な議論がなされていない。今回は前学術集会に引き続き、成人外科の先生の意見もとりいれ、どこまでLPEC法を成人症例に応用できるのかを議論していただきたい。
PD-2 「嵌頓ヘルニアに対する手術の工夫」
嵌頓ヘルニアは、緊急手術による腸閉塞の解除とヘルニア修復を必要とする。腸切除を要した場合にはメッシュ使用が問題となる。手術のアプローチやメッシュの適応など、鼠径部ヘルニアにとどまらず、閉鎖孔・臍・腹壁瘢痕ヘルニアなどの様々な嵌頓症例における術式の工夫について討論していただきたい。
PD-3 「抗血栓療法施行患者のヘルニア手術」
近年、脳梗塞や虚血性心疾患の予防、心臓弁置換術後に抗血栓療法が行われている症例が増加している。そのため中高年に発症することが多いヘルニアの手術は、抗血栓療法が施行されている患者が増加する傾向にある。今回は、抗血栓療法施行中の症例に対する各施設の術前管理、手術方法、術後管理、そして合併症などの結果について報告していただき、最良の周術期管理や手術方法を追求したい。
PD-4 「ヘルニア術後疼痛に対する予防策・治療法に関する工夫」
ヘルニア術後の疼痛には、積極的な治療介入を要する術後早期の疼痛と慢性疼痛があり、それぞれ治療に難渋し患者のQOLを著しく低下させる場合もある。しかし、本邦においての正確な発生頻度や術式による差異等に関する報告は少なく、予防策や治療法に関してもコンセンサスが得られているとは言い難い。
本セッションでは、ヘルニア術後疼痛に関する現状と各施設における予防策・治療法に関する工夫を発表していただき、現時点でのコンセンサスに導いていただきたい。
PD-5 「鼠径部ヘルニアの術前診断」
疾患治療の基本は鑑別を含めた術前診察、検査から得られる診断と、その診断に基づいた治療方針の決定があって実際の治療が行われる。しかし鼠径部ヘルニアにおいては未だ鼠径ヘルニアで有ることの診断のみで手術がなされ、術中に詳細を確認しその時点の判断で手術がなされていることが多いように思われる。一般の疾患のように鼠径部ヘルニアは術前に詳しく診断できないのか、する必要は無いのか。術前診断で術式に変更はないのか。科学として考えた場合の鼠径ヘルニア診断について各施設で行っている現在の診断学とこれに基づく治療について討論したい。

 

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