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ANAクラウンプラザホテル宇部
〒755-8588
山口県宇部市相生町8-1
TEL:0836-32-1112

 第125回日本解剖学会総会・全国学術集会の会頭を務めさせていただきます山口大学大学院医学系研究科神経解剖学の篠田でございます。副会頭に器官解剖学の中村教泰教授、生体機能学・獣医解剖学の日下部健教授を迎え、2020年3月25日(水)から27日(金)の3日間を会期として山口県宇部市ANAクラウンプラザ・ホテル宇部にて開催をいたします。医学界で最も古く伝統ある解剖学会を、明治維新・近代日本の発祥の地であるこの山口で、令和初の全国学術集会を主催できることは光栄の極みで、宇部市、山口県、山口大学と共に万全の態勢で取組んでいく所存でございます。

 解剖学は、進化と発生の時空の中で動物や人体をミクロからマクロまで観察し、カタチに出会い、機能を外挿する生命の形態科学です。研究スタイルの基本は現代流の効率的な目標設定・計画達成型研究というより、偶然の観察から始まる泥臭いものかもしれません。しかし想定外の出会いは楽しく,常にここから独創性の高い発見やブレークスルーが起こるのです。将来に大きな目標を抱きつつも、今ここ(而今)を大切にする気持ちが、出会いから発見を生み、個性的な仮説を育み、今度は仮説を計画的に証明していく方向に転換していくのだと思います。真理は密かに真実のカタチに宿り、その気付きが心を動かし世界を動かすのです。今回の学会のテーマは、「世界を動かすカタチの時空芸術 〜アナドルなかれアナトミー」。今や動画の発達は「空間内のカタチ」だけではなく、時間変化のダイナミクスまでも「時空内のカタチ」として捉える意識に高めました。時間の流れの中で示す目的に叶った動態はまさに機能と表裏一体なのです。現代の解剖学は、分子動態から細胞や人体の運動、個体の行動や脳の活動変化まで、カタチの変化を観察・解析し、見えないカタチの変化を視覚化する方向で発展して来ているように思います。そして、高度に発展した顕微技術や画像技術によって、臨床分野を初め、生命科学の周辺分野を巻込みはじめ、むしろ形態なくして医学・生命科学は語れない時代が来ているのです。

 本学術集会では、この趣旨に沿って、カタチとの出会いから始まり大きく「オートファジー」研究の発展を成し遂げられたノーベル賞学者、大隅良典先生に主賓特別講演をしていただくことになりました。形態学者には大きな刺激と勇気を与えていただけるものと期待しております。また、近年大きな進歩を見せる人類学の系譜解明に関連するシンポジウムを企画し、特別講演では古代骨のミトコンドリアとYクロモゾームのDNA解析から日本人の起源解明を目指した研究分野の第一人者である国立科学博物館副館長の篠田謙一先生性のスペクトラム樹立に向けた分子生命科学の牽引者である九州大学教授の諸橋憲一郎先生、著明な医学史研究者でかつ解剖学者である順天堂大学名誉教授の坂井建雄先生による特別講演が予定されております。

 加えて、形態学的基礎研究の臨床分野への導入で、「ヒト組織再生、カタチと機能の再生」研究の日本を代表する女性研究者、高橋政代先生と出澤真理先生をお招きし、臨床応用への将来的展望をお話しいただく事を予定しております。さらに、最近の高度なAIを利用した医学・医療分野への応用には眼を見はるものがあり、これを支え日本をリードする理化学研究所医科学イノベーションハブ推進・副プログラムディレクター桜田一洋先生を座長とした最先端データサイエンス・AI研究最先端研究者による特別教育シンポジウムが企画され、最大の見ものになるかも知れません。

 もう一つの大きな特徴は、厚労省と文科省が全国規模で推進する医歯学系大学における御遺体を活用した臨床外科トレーニング(CCST: Clinical Cadaver Surgical Training)の重点シンポジウムを企画し、外科医師をはじめ多数の臨床医の先生方にも参加して頂くことを予定しております。

 また、今回は、顕微鏡学会や生理学会との共同シンポジウムも開催されます。前者では、最先端の生物形態学者と理工学系研究者による最先端のデバイスと顕微解析法のチカラをプレゼンテーションしていただこうと思っております。後者では、形態と機能の融合した時空を亘る最先端生命科学が描き出されることを期待しております。最期に学術集会開催期間中に、日本で初めて韓国解剖学会との共催で「日韓解剖学会国際合同シンポジウム(The JAA-KAA International Joint Symposium)」が開催されます。相互の解剖学・形態学の最先端学術交流を図り、さらなる両国の学術的発展と文化的理解を促進する第一歩が踏みだされると思っております。

 さて、宇部市は常盤公園を中心にビエンナーレの数々の彫像が並ぶカタチの芸術、学術の街。霊長類が充実した動物園、珍しい植物の世界コレクションを保有する植物園もあります。山口市は大内氏の室町時代には画僧の雪舟や連歌師の宗祇をはじめ文化人が集まり、ザビエルも布教の中心とした西の京都、芸術文化の町です。日本海側は古代日本の成立に関わる中国大陸、朝鮮半島からの移住と文化の流入口として人類学ミュージアムもあり、萩焼など伝統文化にも触れられます。角島・長門の海と萩の海も秋吉台・秋芳洞などの自然も絶品です。また関門海峡には源平最後の合戦の地、壇ノ浦もあれば、巌流島も見渡せます。どうぞ、山口県の時空の「カタチ」も御満喫ください。この学術集会が、同朋と出会い,異分野・異文化と出会い、過去と現在と未来に出会い、心を動かすカタチのチカラが感じられる大会となることを願っております。

令和元年9月吉日