会長挨拶

第60回日本アルコール・アディクション医学会学術総会
大会長 
上村 公一

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 法医学分野 名誉教授

 この度、日本アルコール・アディクション医学会は 第60回日本アルコール・アディクション医学会学術総会を2025年 10月23日(木)~25日(土)の 3 日間、学術総合センター 一橋講堂(東京都千代田区一橋)にて開催させていただくことになりました。昨年に引き続き、東京での開催となります。

 我が国の物質依存の問題はアルコールだけでなく、たばこ、違法薬物、医療用医薬品まで広がっています。これらに対する対策としては、従来、断酒などの完全な遮断が取られてきました。しかし、アルコール依存症患者の飲酒量を低減させる新しい薬剤が上市され、プライマリ・ケアでの飲酒量低減治療も治療の選択肢になりました。こうしたアルコール依存症治療の断酒から飲酒量低減へのパラダイムシフトが起きています。飲酒量低減によるハームリダクションを治療目標とすることも視野に入ってきており、時代による治療方針や問題への対応の変化が求められています。また、ゲームやギャンブルなど特定の行動に対する自制できない程度ののめり込み(行動嗜癖)を含めた嗜癖(アディクション)が近年大きな社会問題となっています。

 当学会は依存症の基礎、臨床、社会的対応を取り扱う学際的な学術団体です。主な構成メンバーは内科、精神医学、薬理学、法医学、公衆衛生学、心理学、看護学の専門家であり、学術的な交流を通して、アディクション研究を拡充させ関係機関との連携を強化していきたいと思います。

 このように多様化するアディクションに対応していく上で、依存のメカニズムの研究・教育・治療体制を整備することが求められています。今回の学術総会は最近続いていた日本アルコール関連問題学会との共催としてのアルコール・薬物依存関連学会合同学術総会の形式をとらず、本学会の単独開催となります。人では還暦にあたる60回目の開催という記念学術総会になることから、テーマは「アディクション研究の温故知新」としました。歴史ある本学会の先人たちのアディクション研究の進め方や成果を再発見し、今後のアディクション研究に生かしていこうと考えています。

 参加される皆様の今後のアディクションの研究と診療活動に役立つ学術総会にしたいと考えています。多くの皆様のご参加・ご登録をお待ちしています。