ご挨拶

 謹啓 皆様には、時節柄ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また、昨今の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の影響を受けられた皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 さて、第29回埼玉県理学療法学会は、COVID-19の感染拡大の影響をふまえ、WEB上でのオンライン学会として2021年1月17日から開催することになりました。

 本会の会員数は、増加の一途を辿り、今年度は、5,000人を超える会員数となりました。近年の埼玉県理学療法学会を振り返りますと、参加人数や演題数の増加だけでなく、研究デザインの質や専門性の高い演題が、多岐に亘る分野においてみられるようになっております。これは、我々が、臨床の場で科学的根拠に基づいた治療をこれまで以上に心がけるようになったことの表れかと思います。一方でエビデンスレベルが高い治療であっても、機器や時間的な制約によって、それらが目の前の対象者に実践できる機会が失われている臨床家も少なくないようです。多様化する理学療法全体の質を高めるには、現実的な手段として、理学療法士個々人が、それぞれの職場で培った経験を整理し、職場環境に応じたデータを融合させて、目の前の対象者に向き合うことが大切と思います。そして、その積み重ねがエビデンスとなり、県民や他職種に対する理学療法の質を担保することに繋がっていくと思います。そこで、今学会は、テーマを『多様性のあるエビデンスと理学療法』とし、症例数や測定項目数および統計学的な有意差の有無に捕らわれずに、各施設の経験と蓄積されているデータを提示していただき、参加者と気軽に明日からの臨床を考える場にしたいと思っております。

 特別講演は、北里大学の松永篤彦先生を招聘し「明日から取り組める臨床データの収集と活用」と題し、高価な機器や設備等がない施設でも取り組むことができるデータに基づいた理学療法の進め方についてご講演をいただきます。学術発表におきましては、EBPTワークシートセッション、解説付き演題セッションなど一般演題とは異なった趣向のセッションを企画しました。そして、その後に各領域における理学療法データの活用と展望についてシンポジウムを行う予定です。本学会を通して皆様とともに県民の豊かな生活に寄与する理学療法(士)の在り方について考えていければ幸いに存じます。

 つきましては誠に恐縮ではございますが、本学会の趣旨をご賢察いただき、皆様方のご協力ご支援、ご指導を賜りますよう切にお願い申し上げます。

 末筆ながら、皆様の益々のご繁栄を心より祈念いたします。

謹白