会長挨拶

会長

第61回日本高気圧潜水医学会学術総会 会長
髙木 元

日本医科大学大学院 総合医療・健康科学分野 教授

第61回日本高気圧潜水医学会 学術集会の開催にあたり、謹んでご挨拶申し上げます。
本大会のテーマは「The Power of HBO:『治らない』を、治す~あきらめない医療の最前線〜」といたしました。私たち高気圧酸素治療(HBO)に携わる者が日々向き合っているのは、既存の治療では限界を感じる症例、あるいは一刻を争う生命の危機です。物理学的な「圧力」と生理学的な「高濃度酸素」を融合させたこの治療法には、医学の常識を塗り替える圧倒的な「力(Power)」が宿っています。

急性期から難病まで、進化し続ける適応

HBOの適応は、一酸化炭素中毒や減圧症といった急性期疾患から、難治性潰瘍や放射線障害、突発性難聴といった慢性期・難病領域まで、極めて多岐にわたります。私たちは今、この幅広い適応をさらに深掘りし、エビデンスに基づいた「次世代のHBO」を確立すべき局面に立っています。本学会では、未来への発展を目指した共同研究への支援体制を支援し、確かな医学的知見へと昇華させる場を提供いたします。

シンプルであることの強靭さ(レジリエンス)

HBO装置には、初期の導入費用という壁が存在します。しかし、ひとたび稼働すれば、その基本構造は「酸素」と「コンプレッサー」という極めてシンプルなものです。このシンプルさこそが、災害時における強みとなります。インフラが制限された有事においても、安全かつ確実に運転を継続できるこの治療法は、災害医療のラストリゾートとしての可能性を秘めた「強靭な医療インフラ」としての側面についても再評価したいと考えています。

ICTによる教育の革新:

本大会では学会独自の教育プログラムとして、最新の仮想現実空間(VR)を用いたシミュレーション講習や、時間と場所を選ばないオンライン講習を企画いたしました。チャンバー内の動態や緊急対応をVRで疑似体験することで、知識のみならず、より実践的な技術習得が可能となります。デジタル技術(ICT)を駆使し、安全管理のさらなる底上げを図ります。

越境するチーム、共創する未来

本学会の最大の特徴は、その多様性にあります。医師、看護師、臨床工学技士といった医療職はもとより、現場の第一線で救助にあたる消防庁、海上保安庁、そして潜水医学の知見を支える海上自衛隊。これほど多職種・多機関が「高気圧環境」という旗印のもとに集結する学会は他にありません。この「チームでの学び」こそが、私たちが持つ真の強みです。
「もう治らない」とあきらめかける患者さんの前に、私たちは常に最良の治療の選択肢として立ち続けたい。本学術集会が、皆様の情熱と知見が交差する刺激的な場となり、高気圧潜水医学の新たな扉を開く一歩となることを切に願っております。
皆様とお会いできることを心より楽しみにしております。