第49回日本小児栄養消化器肝臓学会学術集会の会頭として謹んでご挨拶を申し上げます。ご指名をいただきました、清水俊明理事長先生、理事の先生方にも心より感謝申し上げます。
学術集会のテーマを申し上げるにあたり、若干の前置きをいたします。
2020年初頭から我が国を不安に陥れた新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の小児医療に与える影響はたいへん大きなものでした。「小児はCOVID-19が重症化しない」といわれ、小児科医の役割は一時期 過小評価されたように感じる時期がありましたが、それは大きな誤りだと思っております。小児においてCOVID-19が重症化しないことには、COVID-19を重症化させないような秘密が隠されているわけであり、それを探しだすのが私たち小児科医に課された大切な務めであると感じました。なぜ、小児の栄養消化器肝臓学会の一会員である私ごときが、ここでそのような話をするかという理由をつぎにお話しいたします。
消化管には、消化・吸収以外に「人体最強の感染防御機備である」という重要な使命があること、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の人体側の受け手であるACE2という受容体は、消化管粘膜に最も多く発現されていること、小児の重症例である年長児の小児炎症性多臓器症候群には消化器症状がたいてい合併すること、などヒントはたくさんあります。また、コロナ禍において小児領域で最も問題にされたのが「子どもの精神衛生」で、これは「腸脳相関」が重要な役割を演じている分野でもあります。
この挨拶文を書いている時点では、未だ海のモノとも山のモノともわからないエビデンスしか持ち合わせておりませんが、当学術集会では、COVID-19にも念頭に置いて「消化管免疫」「腸脳相関」といった、小児栄養消化管肝臓学分野では今まであまり主役になってこなかった分野に光をあてたいと思います。それを担うモノとして、私たちと共生関係にある見えないパートナーである腸内細菌叢は無視できない存在です。私たち誰もがもっているこの腸内の独特の空間を宇宙空間になぞらえて「内なる宇宙」と表現し、当学術集会のテーマといたしました。
現実的な観点も見据えて、同学会で活躍している各委員会に広くお声がけして、各分野で話題になっているテーマをもとに、シンポジウムを策定いたしました。
2022年9月30日からの3日間、東京の新宿の地で、皆様にお会いできることをたいへん楽しみにしております。
さいごに、会の開催にあたり、多大なご努力を賜った、当学会事務局のスタッフの方々、当講座医局員、ご協力をいただいたご家族、関係者の方々に、深い感謝の意と心よりの敬意を申し上げます。