ご挨拶

第27回日本アロマセラピー学会学術総会 大会長
林 真一郎

東邦大学薬学部客員講師・グリーンフラスコ代表

 皆様方におかれましては益々ご発展のこととお慶び申し上げます。このたび、第 27 回日本アロマセラピー学会学術総会(以下、第27回大会)を 2024 年 11 月 2 日(土)、3 日(日)に昭和大学上條記念館上條ホール(東京都品川区)で開催致します。同大会長を私、林真一郎が務めさせていただきます。今回の第 27 回大会は日本ハーブ療法研究会(大会長は鈴木慎太郎先生(昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門准教授、第27回大会実行委員長を兼務))との合同大会として開催致します。

 第27回 大会のテーマは『The Rising of Aromatherapy and Phytotherapy 〜芳香・植物療法の夜明け~』と致しました。その狙いについて、加えて日本ハーブ療法研究会との合同大会とした事由について簡単に説明させて頂きます。アロマセラピー(芳香療法)とフィトセラピーまたはメディカルハーブ(植物療法)はいずれも植物を起源とした療法ですが、前者が芳香成分(精油)のみを使うのに対して後者は水溶性成分を含めすべての成分を丸ごと使うといった違いがあります。この両者はわが国への導入の歴史や経緯が異なるため、取り扱う業界や研究領域が別々になってしまっているのが現状です。そこで第27回大会ではそれぞれの研究者や愛好家が一同に集まり、互いの優れた点を見つけ学び直し、今後の交流や連携を深めていくことで強力なシナジー効果を得られるのではないかと期待し、2つの学術団体の合同大会として開催するに至った次第です。初めて学ぶ人々にとっては“夜明け・始まり”として、既にご活躍中の方々にとってはその知識や技能の“向上・増大”として第27回大会を役立てて頂きたく、その願いを込めて“The Rising~”と表現致しました。

 この第27回大会を機にアロマとハーブの2つの領域における情報交換や社会的認知が進み、臨床医学や保健医療での活用が一層進むことを目指したいと考えております。皆様方におかれましては我々の試みにご賛同いただき、様々な形でご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

第10回日本ハーブ療法研究会学術講演会 大会長
鈴木 慎太郎

昭和大学医学部医学教育学講座
昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門准教授

“Naturen gör inga språng.”(Philosophia botanica)
自然は飛躍せず. (英訳:Nature does not proceed by leaps and bounds.)

 これはカール・フォン・リンネ(Carl von Linné、1707-1778)の遺した名言です。 リンネは18世紀のスウェーデンで活躍した植物学とくに植物分類学の大家として著名ですが、ウプサラ大学(スウェーデン)やライデン大学(オランダ)で医学の研鑽を積んだ医師でもありました。1741年に母校・ウプサラ大学の医学教授に就任した彼は臨床医学ではなく、学生たちに植物学と薬物学を教えていたそうです。植物を含む生物を「綱」・「目」・「属」・「種(および変種)」と分類する手法を生み出しただけでなく、私達人間を含む母乳を飲んで育つ動物を「哺乳類」と命名したのもリンネの大きな功績です。こうした研究成果は地道なフィールドワークや観察から生まれました。情報通信技術が革新した現代においても科学とくに医科学は地道な学問のままです。どんなに優れた基礎医学分野の研究成果も、ベッドサイドで検証されなければ臨床医学の発達に全く寄与出来ません。また、大規模な臨床研究やメタアナリシスから得られた知見を集積したとしても、それらがエポックメイキングな治療法の確立に直結しているわけではありません。発見から何百年経過しても確固たる診療技術を欠く疾患は山ほどあります。それでも人類は歩みを止めません。目の前の患者を一人ずつ丁寧に診療し、臨床で得られた“気づき” を問題として提起し、その解決法を多職種チームで着実に解決を導けるように努めます。そのプロセスや裏付けとなる事象を臨床研究や基礎医学研究により実証します。医科学に発達を早める“チーティング(不正行為)”は存在しないのです。植物学と医学を融合した考えを持っていたリンネはこうも言っています。

“Naturen är själv ofta den bästa botaren av sjukdomar.” 自然はしばしば病気に癒しをもたらす.(英訳:Nature itself is often the best healer of diseases.)

 ハーブ療法や植物療法が秘めた癒しの力は∞(無限大)と言えます。森林浴や高原の澄んだ空気を吸うことによって、心と体が洗われる経験は誰にでもあると思います。これは“気のせい”ではないのです。木々や草花から発したphytoncidesが私達の生理機能を高めてくれているのです。太古のギリシャ時代において迷信や呪術を排して臨床の観察と経験に基づく科学的医学を実践したヒポクラテス(BC460頃 - BC370年頃)もこう述べています。

 “Nature itself is the best physician.”自然は最も優秀な医師である.

 「臨床医学・生命科学における植物の力」を信じましょう。共に学びましょう。そして、その素晴らしさを語り合いましょう。