会長挨拶

第25回日本救急看護学会学術集会
会長 増山純二
令和健康科学大学 看護学部教授
臨床シミュレーションセンター長

第25回日本救急看護学会学術集会
開催にあたって

 この度、第25回日本救急看護学会学術集会を2023年11月24日、25日に出島メッセ長崎(長崎市)で開催することになりました。
 1999年に大阪で第1回日本救急看護学会学術集会が開催され、もう四半世紀が経とうとしています。現在の医療は人口減少・少子高齢社会の急速な進展とともに、介護、医療のニーズは高まり、「病院完結型」の医療ではなく、地域での療養生活を支える「地域完結型」の医療提供体制の構築が求められています。救急医療においても救急搬送の6割以上が高齢者となり、急病と言われる内因性疾患を理由に搬送される患者が多く、高齢者の救急医療体制についても課題が山積している状況です。
 団塊世代が75歳以上になるいわゆる2025年問題に向け、2016年には特定行為に関わる看護師の研修制度が追加され「保健師助産師看護師法」が改正されました。
 また、日本看護協会は、看護の専門分化として、1994年に「専門看護師制度」、1995年に「認定看護師制度」を発足しており、2020年より特定行為研修を組み込んだB課程認定看護師教育が始まっています。さらに、日本看護協会の重点事業には「ナース・プラクティショナー(仮称)制度の構築」があがっており、臨床では、日本NP教育課程修了者が日本版診療看護師として活動している看護師も見られるようになりました。看護が専門分化する中で、看護の質向上を図るためには看護師間の協働・連携が重要であり、特に、スペシャリストとジェネラリストの協働が鍵となります。スペシャリストとは、一般的に、ある学問分野や知識体系に精通している看護職を言います。一方、ジェネラリストとは、特定の専門あるいは看護分野にかかわらず、どのような対象者に対しても経験と継続教育によって習得した多くの暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力を発揮できる看護職とされています。日本看護協会は、臨床看護実践レベルを段階的に示すクリニカルラダーを開発しました。本学会においては、救急看護師のクリニカルラダーが示されています。このように、ジェネラリストにおいても、看護実践力を向上させるスペシャリストの側面を持つことが期待されており、そこでの協働が、更なる看護の質向上に繋がり、そして、その協働が今後の課題でもあると考えます。
 このような医療ニーズ、そして、スペシャリストとしての救急看護実践が25年前の学術集会で創造されていたでしょうか。また、現在、私たちが創造しているスペシャリストは、この先、社会を支えることができる救急看護実践者になり得るのでしょうか。今、一度、救急看護の基本概念に立ち返り考えていく必要があります。
 そこで、第25回学術集会のメインテーマを「救急看護実践の温故知新〜未来の社会を支えるスペシャリスト〜」としました。社会情勢が変化し、医療ニーズも変わり、看護の専門分化も変化しています。このような時代に、これからの医療ニーズをしっかり捉え、これまで培ってきた救急看護の概念を基本とした上で、未来に向けたスペシャリストの創造について、学術集会の場で議論したいと思います。
 実り多い学術集会になりますよう最善を尽くす所存です。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。