障害者の権利に関する条約が批准され,インクルーシブ社会への転換が目下の課題となっています.この時代の中で,私たちは,支援を必要とする子どもたちの育ちにどのように向き合っていくべきなのでしょうか.日本小児精神神経学会は,医療だけでなく,コメディカルや教育にかかわる会員を擁する特徴ある学会だと思います.今回,北海道大学大学院教育学研究院での大会運営を仰せつかり,私たちは,やはり「教育」をテーマにしたいと考えました.教育はまさに子どもたちが育ちゆく場であり,次世代の揺籃です.家庭,地域,学校といった場の中で,子どもたちが相互の多様性を感じ取りながら育つことがインクルーシブ社会につながっていくと思います.
しかし現時の教育においては,「障害のある児童生徒」,「外国人児童生徒」,「貧困などに起因する学力課題」,「いじめ・不登校問題」など,児童生徒の多様性が背景にある教育事象が大きな課題となっています.これらの課題に向き合い,解決の糸口を探るためには,多様性をラベル化するのではなく,子どもたちの実際の生活の場から考える視点が必要でしょう.本大会の主なプログラムでは,教育と医療の連携を軸に,子どもの多様な育ちを現実の世界で起こっていることから考えていくための内容を企画いたしました.
これらのプログラムと,皆さまからの基礎研究,臨床実践研究のご発表とが交差し合い,支援を必要とする子どもたちの育ちに向き合う新たな視点が醸成されることを願っています.今回の大会テーマに留まらない,多様な演題発表の応募をお待ちしております. |