この度、「第122回日本解剖学会総会・学術集会」を長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻生命医科学講座組織細胞生物学分野(旧医学部解剖学第三講座)でお世話させて頂くことになりました。伝統ある本学会を長崎で開催できます事、大変光栄に存じる次第であります。また万全の体制を組むために、肉眼解剖学分野の弦本敏行教授並びに形態制御解析学分野の森望教授に副会頭に就任頂いております。更に、歯学部口腔解剖学2分野と保健学科の解剖学担当教室を含め実行委員会を立ち上げて参りました。記録によりますと長崎では、1931年第39回大会(国友鼎先生)、1968年第73回大会(安中正哉先生)以来三度目の開催となります。
今回の学会テーマは、「見る術を知り、形態の本質に迫る」(ダヴィンチ哲学に学ぶ)とさせて頂きました。その心は、「かたち」の本質的理解のためにはそこに隠された背景にある要因、強いて言えば分子的成り立ちを知る必要があり、そのためには適切な方法論を駆使する必要があるということであります。開催地、長崎は嘗て江戸の鎖国時代、洋の東西を問わず新知見や新技術が日本に初めて持ち込まれた出島の地であり、正に本邦初の西洋医学教育がポンペファンメールデルフォールトにより開始され、その中で系統的人体解剖が初めて行われたいわば日本に於ける解剖学発祥の地でもあります。このような歴史的背景に肖り、形態解析の本質である「見る術」に回帰し、基礎を見つめ直す機会となればと考えた次第です。
そこで本学会では、特別講演として酵素抗体法の開発者Paul K Nakane教授、immunogold法の開発者Jurgen Roth教授、神経科学の旗頭David J Anderson教授、日本人の人類学的解析の第一人者石田肇教授をお招きし、それぞれの立場で「見る術」を解き明かして頂ければと考えております。何卒、多数の先生方の御参加と活発な御議論をお願い申し上げます。また、市民公開講座としては、西洋医学の日本への浸透・伝播に注目した医学史を考えております。
尚、長崎にはモナコ、香港と共に称される世界新三大夜景を含め様々な文化的観光資源が御座いますが、特に平成27年度には「日本の近代化産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が世界文化遺産に登録され、更に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が有力候補に挙がっております。是非この機会に御来訪賜り、世界との文化交流の歴史にも思いを馳せて頂けますれば幸いと存じます。
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